過疎の地域の商業地域価格はなぜ下がる?
- 靖宏 河畑
- 2018年9月4日
- 読了時間: 3分
商業地の価格が下落するのは売り上げが減るからです。
売り上げが減っていく商店街では
店を出す人が減る=需要の減少
閉店する店が増える=売り出す=供給の増加
需要<供給で価格が下落します。
なぜ売り上げが減るかというと、お客さんが減るから。当たり前。
いま、人口は減少期です。人口が減れば商店街のお客さんは減ります。これも当たり前。
例えば石川県の輪島市では平成25年から平成30年までの5年間で、人口は8.7%減少しました。
輪島市の地価公示の商業地価格を見ると、輪島5-2は
H25 71,000円→H30 55,500円と-21.8%も下落しています。
人口の減少=お客さんの減少は8.7%なのに、商業地の下落は21.8%です。
なんで?
輪島市は人口の減少と同時に65歳以上人口(以下、老年人口)の比率も高まっています。
平成29年で約44%
老年人口の比率が高まると、商店街の売り上げが減るのでしょうか。
減ります。
老年人口率が高まると世帯所得が減少します。
輪島市と私の事務所がある加賀市(老年人口率約35%)を比べてみます。
「年収ガイド」というサイトからのデータです。

世帯収入が300万円未満の割合が加賀市では39%であるのに対して、輪島市では55%となっています。輪島市では半分以上の世帯が所得300万円未満です。
老年人口率が高くなると、世帯収入300万円未満の比率が高くなります。これは決して輪島市の給料が低いわけではありません。
この理由は、年金生活世帯の比率が増えるからです。
だから、輪島市では同時に定年退職の時期が近い500万円以上世帯の比率が減少しています。
このデータはあくまでも世帯別の年収ですので、貯蓄がどれだけあるかまでは明らかにしていません。
老年世帯は老後の備えとしてそれなりの貯蓄があると容易に想像できます。
例えば、65歳で退職して貯蓄が3000万円あるとした場合、85歳まで生きるとしたならば毎年150万円ずつ貯蓄を取り崩すことで生活水準(消費額)を維持できそうなものです。
しかし、ここに大問題があります。
85歳で人生が終わる保証なんてどこにもない。ひょっとして100歳まで生きるかもしれない。
85歳で貯蓄をゼロにしてしまうと、あとは本当に年金しかなくなってしまいます。
自分が何歳まで生きるか分からない以上、老後の蓄えは計画的に使うことができないのです。
貯蓄を使い果たしてもまだまだ生きるというのが最悪のシナリオになりますので、どうしても貯蓄の取り崩しは慎重にならざるを得ません。
結果的に年金生活世帯は消費額を抑えることになります。
このデータから読み取れることは、
老年人口率の上昇=低所得世帯の増加=消費額の減少
ということになります。
話を商業地価格に戻しますと、
過疎の市町の商業地域では
人口の減少=お客さんの減少
老年人口率の上昇=低所得世帯の増加=消費額の減少
の2重の影響によって売り上げが減少していると言えます。
つまり、過疎の市町の商業地域が人口の減少以上の勢いで衰退している、つまり商業地価格の下落率が人口の減少率よりも大きくなっているのは、こんなところにもその理由があると勝手に考えています。